第4回 昔話の語法勉強会に行ってきました。

2016年10月25日、そぼふる雨の中、昔話の語法勉強会に行ってまいりました。

昔話の語法を勉強するのが初めてという方も多数いらっしゃいました。
毎回ひとつの昔話を題材に、細かくどんな語法が使われているのかな、と確認していきます。

ちなみに事前学習として

『こんにちは、昔話です』(小澤俊夫著 小澤昔ばなし研究所刊)
『昔話の語法』(小澤俊夫著 福音館書店刊)

に目を通していきました。

さて、講座のレポートですが。

今回の題材は、

「ちくりんぼう」(『雪の夜に語り継ぐ』笠原政雄 福音館書店)

この昔話は、『日本の昔話5ねずみのもちつき』(小澤俊夫再話 福音館書店)に収録されている「三枚のお札」の原話です。

まずは、「ちくりんぼう」を語ってくださいました。

「語法に気をつけて聴いておいてください」

と言われたのに、本気で楽しんで聴いてしまいました(;´∀`)アハハ

語ってくださったのは、「三枚のお札」を日常語に直したお話です。

そして、段落に分けた原話の「ちくりんぼう」を

「どんな語法が隠れているのかな~♪」とひとつひとつ確認していきます。

そしたらば、出るわ、出るわ。花咲じいの宝のようにざっくざっくと。

発端句から始まり、時代・場所・人物を不特定に語る固定性

「あるお寺の方丈が小僧にね、」と不特定に語っているのに頭に浮かぶのは、ひとつのお寺と、一人の和尚さんと、一人の小僧さんの姿。
背景も、複数いるであろう小僧さんの姿も頭には浮かびません。(昔話の孤立性

冬木を取りに行ってこいと、三枚のお札を渡され、一人で山にいく小僧さん。(三という数字=固定性、一人で出かける=孤立性
まさに外的刺激を受けて一人で旅に出るのです。

お札から出るのは針の山(昔話は硬いものを好む)、火の山(昔話は原色を好む。火=赤)

一度に会話しているのは方丈さんと小僧さんだけ。(昔話の場面は一対一で構成される

ほんの数行の間にこれでもかと出てきます。そのたびに他の昔話でも具体的な例を挙げていただき、「ふむふむ、なるほど」と理解は深まります。
確かに「かしこいモリー」も幸せ(結婚)と引き換えに王様に取引を持ち掛けられて一人で旅に出ます。指輪や剣など硬いものを取ってきますね。
姉妹も三人だし、王様の息子も三人だわ。|д゚)

この場合の旅とは旅行ではなくて、主人公の内面、精神的な成長を促す試練への旅路であり、主人公の意思は関係なく行かされてしまうところが、この先のストーリーを期待してワクワクと期待感を煽られてしまうんですよね。

ストーリーは主人公の幸せな結末に向かって一直線に進みます。幸せになるとわかっているから安心して聴き手も一緒に主人公になりきって冒険できる安心感。
耳で聴いて理解しやすい一対一の場面。
日の暮れた山で途方にくれても灯りや小屋は見つかる安心感。
「鬼ばばが出るぞ」と言われたら本当に出てくる満足感。
異界の生き物とも会話が成り立つ楽しさと分かりやすさ。
楽しい三度の繰り返し。
面白くてわかりやすい極端な表現。
ピンチの時にはすぐに出てきてくれる火の山、針の山のお助けアイテム。
ギリギリのところでタイミングよく危険を回避しながら進むスピード感のあるストーリー展開。
間抜けな鬼ばばは最後には必ず退治される満足感。

あれ? 昔話の語法って聴き手が昔話に期待するところそのものじゃない?

それもそのはず、語り手の聴き手への深い愛情が、聴き手の求めるものに応えるように語られてきたことで、この形式、つまり語法が出来上がったのですよ!
その愛情は世界共通なんですよ!
これこそリューティさん曰くの「昔話の形式意志」!(だと思う)

それでですね、『昔話の語法』(小澤俊夫著 福音館書店)の冒頭に戻るわけですよ。引用しますとね、

「昔話はどこにありますか」

この言葉の意味に気付いたときにぞわっと鳥肌が立ちました。(;゚Д゚)
この言葉を語法のテキストの最初にもってきた小澤先生さすがだなぁ。深いなぁ。

伝承の語り手ではない私たちは、研究者さんたちが掘り出してきてくれた昔話資料を訳者や再話者を通したテキストから語るしかないのですが、実際聴き手の前で語るのは私たちですからね。
その場、『昔話』を一時共有する目の前にいる人たちのために愛情をこめて語りたいですよね。
というわけで、より理解を深めるためにこれからも精進しましょう!

次回の第5回昔話の語法勉強会は2017年2月17日だそうです。

最後に今回の講座で紹介された本です。
『こんにちは、昔話です』小澤俊夫著 小澤昔ばなし研究所
『昔話とは何か 改訂』小澤俊夫著 小澤昔ばなし研究所
『昔話の語法』小澤俊夫著 福音館書店刊
『ヨーロッパの昔話 その形式と本質』マックス・リューティ著 小澤俊夫訳 岩崎美術社
『昔話 その美学と人間像』マックス・リューティ著 小澤俊夫訳 岩波書店
『昔話の本質 むかしむかしのあるところに』マックス・リューティ著 野沢 泫訳 福音館書店 絶版 1985
『昔話の解釈 今でもやっぱり生きている』マックス・リューティ著 野沢 泫訳 福音館書店 絶版 1982
『昔話の本質と解釈』マックス・リューティ著 野沢 泫訳 福音館書店 1996

6 thoughts on “第4回 昔話の語法勉強会に行ってきました。

  1. もっちゃん
    報告をありがとうございます。
    もしかしたら、私の説明より分かりやすいんじゃないかい~?

    昔話の語法は、とってもむつかしいしね。でもこつこつ勉強をつみ重ねたら、自然にわかるようになるしね。
    みなさん、諦めずに続けましょうね~

      ヤン

  2. ヤンさん、コメントありがとうございます。
    私の説明が分かりやすいとすれば、ヤンさんの講座のおかげで理解が深まったということですね~良かった(*´艸`*)
    これからもコツコツ勉強を積み重ねていきます。よろしくお願いいたします。

    もっち

  3. もっちさん、ほんとによくわかる報告です。
    ヤンさんに講義を受け、そしてこの報告でおさらいをさせてもらいました。

    亀の速度ですが、コツコツがんばります。
    「私たちは、伝承の途中にいる」んですから、途切れさせてはいけませんよね。
    後は自分の理解と記憶力がどこまで持つか、自分との戦いです。
    今日も、サバの味噌煮を作ろうとしたのに、お皿に盛り付けた時、味噌を入れ忘れてるのに気付きました。

  4. ジミー先輩、コメントありがとうございます。

    私たちは伝承の途中にいるんですね、なんだか感動です。
    ただしく語法に則った昔話を目の前の子どもたちに、そして後世に伝えていきたいですね。私もジミー先輩の背中を追いかけます!
    味噌入れなくてもそれはそれで美味しいと思います。

  5. もっちさん、ありがとうございます。 わかりやすくて いいおさらいができました。

    「ちくちんぼう」を語法を考えて聴いて下さいと 言われて 聴いてみました。
    “3”を何度も感じました。
    三枚のお札、登場人物が3人、冬木の切るところ3回、寝るシーン3回、お便所の返事のところ3回、
    お札によって出てくるもの3つ、おしょうさんのじらし3回、でもこれは 原話では2回しかない。
    再話の時に 3回に聞こえるように 付け加えられたということで なるほどと思いました。

    日常語だったのでとても自然に聴けました。
    こわい話のはずが なんだか 楽しくおもしろい話にきこえたのは
    私だけでしょうか?

  6. キリリさん、コメントありがとうございます。

    3回の繰り返したくさんありましたね~。
    日常語の語りは耳になじみやすくて、楽しいですよね。

    もっち

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