日別アーカイブ: 2017年7月8日

第6回 昔話の語法勉強会レポート

こんにちは、もっちです。

第6回昔話の語法勉強会に行ってきました。
今回、どんな語法が使われているのか勉強するのはグリムの昔話から『三本の金髪を持った悪魔』(KHM29)です。

テーマ📖
「主人公は死の危険に陥るが、まさにそのことが主人公をいっそう充実した高度な生へ導く。死の危険に陥った者だけが、死の現実を知った者だけが、人間として完成するのである。」(引用『昔話の解釈』マックス・リュティ著 野村泫訳 福音館書店)

『昔話の解釈』でマックス・リュティ氏は、『三本の金髪を持った悪魔』がもっているテーマをこう説明しているそうです。

え・・・死にかけなきゃ人間として完成されないの?(;´Д`)
と驚きましたが、この主人公、まさに何度も死にかけます。
何度もです! 本当に幸運の皮をかぶって生まれて来なかったら、最初の死の危機で死んでます。でも、何度も死にかける羽目になったのは、幸運の皮をかぶって生まれてきたからなのです。もうここから状況の一致が始まっているような気がします。

さて、今回も細かくどんな語法が使われているか確認しながらの講義でしたが、そのなかで今回テーマに沿ったかたちで注目したのは、主人公の死と生の対比でした。
前述しましたが、この主人公は本当に何度も死の危機に直面します。
生まれて数日経ったところに王様が村へやってきて(状況の一致)、自分の娘と結婚する運命にあることが予言(昔話では必ず予言通りになるのです)されている男の子を大金と引き換えにもらい受け、箱に入れて川に流します。こんなのもう、溺死するか、箱の中で餓死するかのどっちかしか想像できません。耳で物語を聴いているので、その時点で「死んだな…」と思いますよね。でも即座に昔話の主人公がこんなところで死ぬわけがないと期待します。すると、箱には一滴の水も入らず(完全性)、うまいぐあいに水車小屋の小僧さんに拾われます。そして、子どものいない水車小屋の夫婦に育てられるのです。やったぁ、生きてた!

それから十三年たったころ、水車小屋に王様がやってきます(状況の一致)。そして、王様は、その若者があの予言の子だと気付きます。そして、王妃に手紙を持ってきた若者を殺せという内容の手紙を書き、それをその男の子に配達させます。え~、そんなん殺されてしまうやん!

それからさらに、森で迷い、盗賊の家に辿り着きます。その家で留守番していたおばあさんに「盗賊たちが帰ってきたら殺されてしまうよ」と言われてしまいます。ここでも危ない!と死の危険が迫っています。
でも、盗賊の親玉は、若者が持っていた手紙を読んで、「姫と結婚させよ」と書き換えてしまいます。(手紙の書き替えのモチーフのことを『ウリヤの手紙のモチーフ』というそうです)さらに、城までの道を教えてくれます。良かった、死ななかった!

そして城に手紙を届けた若者は予言通りに姫とスピード結婚します。昔話は展開が早いのです。手紙の内容を疑ったり、結納を交わしたり、平民の子と?と眉を顰められたりしません。姫も若者が美しいからという表面的な理由だけで結婚します。内面を語らないのは昔話の平面性なのです。またしても若者は死の危機を乗り越えましたよ。

そこへ王様が帰ってきて、殺したとばかり思っていた若者が、娘と結婚していたことに驚き、怒ります。
そして、姫との結婚を認めて欲しければ地獄へ行って悪魔の金の髪を三本持ち帰れと言われます。若者はその言葉によって旅に出ます。そう、昔話の主人公は内面を言葉で表現されないので、外的刺激によって旅にでるのです。

と、こんな風に死の危機と、それを乗り越える生が一対のエピソードとして組み込まれて語られます。白雪姫も同じですね。
主人公の若者は、何度も死の危機に直面して高度な生へ到達したのでしょうか。人間として完成されたのでしょうか。
少なくとも若者は、賢く生き抜く力と知恵を得、昔話のハッピーエンドの要素(富の獲得、結婚、身の安全)を全て手に入れましたよ。

どの場面とどの場面が対比になっているか、お手元のテキストで確かめてみてくださいね。

7月 日常語で語るための勉強会

早いですね~もう7月ですよ。

4日に日常語で語るための勉強会がありましたので、報告いたします。

 

<語り>

うりひめの話」 語りの森HP 日本の昔話より

リンクこちら→https://katarinomori13.com/jfolktales.html

夢の蜂」 『日本の昔話1』

どろぼうがみたら、かえるになれ」 『日本の昔話1』

 

<テキスト>

へびのむこさん」 『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』村上郁/再話

本のお知らせはこちら→https://katarinomori13.com/itiba.html

頭の大きな男の話」 『日本の昔話4』

金剛山(くむがんさん)のとら」 『朝鮮民譚集』孫晋泰編/勉誠出版  村上郁/再話

※『日本の昔話1~5』は、小澤俊夫/再話 福音館書店 です。

 

●「うりひめ」は類話がとっても多いんですって~。よく知られている「うりひめ」では、あまんじゃくがものすごく悪いヤツだったり、ものすごく怖いヤツだったり、うりひめが食べられちゃったり、、、。

そのたくさんの類話の中から、村上郁さんがこの「うりひめの話」を選んで再話されています。この「うりひめの話」では、あまんじゃくは怖いというより、いたずらっ子の子どもそのものです。「いっしょに外へ遊びにいこう」と言います。「なしの実に鼻くそをつけて落としたり」して、くすっと笑ってしまいます。怖い話としての印象が強い他の「うりひめ」とは違って、この「うりひめの話」は、怖くないあまんじゃくなので、ほほえましい、幼い子にも語れるおはなしになっています。ブラボ~!!

 

●日常語で普段話していると「~と言いました」や「~と言うと」は省略していることが多いです。日常語のテキストにするとき、緊張している場面や、早く次が聞きたいだろう場面や、テンポよく次にいきたいところなどは、思い切って「~と言いました」をカットしてみてもいいかもしれません。

 

●「夢の蜂」は登場人物の二人の男を、どちらの男のことを言っているのか聞き手に分かるように語るのがなかなか難しい問題です。書きことばのテキストには描かれていない<間>をうまくとらなければいけないようです。

 

●日常語の普段の会話では

「あっはっは、あっはっは」と笑いはってな

とは言いません。表現しづらく難しいので、

「大笑いしたんやて」(かぶバージョン)でいいんですね~

 

●「柿売りたち」を普段使いの日常語にするとどうなりますか~?

「私たち」だったら「私ら」でいいんですけど…

「柿売りら」はちょっと言いにくいかも。(もちろん言いにくくない方はいいんです…)

「柿売り みな(みんな)」だと自然な感じで複数形になりますね(*^o^*)

 

 

今日はとってもとっても暑いです。

日が照りすぎてもおそろしい、雨が降りすぎてもおそろしい、、、

自然はものすごいエネルギーでおそってきます。

昨日は七夕でした。

いろいろなことをお願いしました……

 

8月は日常語の勉強会はお休みです。

9月には過ごしやすくなってるかな?

みなさま、ご自愛くださいね。

よい、夏休みを~(*^0^*)♪♪

 

かぶ~