『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論上』報告
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第3章書評など
『はじめてのおつかい』と『こすずめのぼうけん』1976年発表
いまでは、名作絵本、古典といわれて、子どもたちに定番人気の2冊ですが、この書評は、1976年にこの2冊が出版された当時に書かれたものです。
出版当初から、瀬田先生は高く評価していました。
『はじめてのおつかい』筒井頼子作/林明子画/福音館書店
『こすずめのぼうけん』エインワース作/石井桃子訳/堀内誠一画/福音館書店
この2冊は、幼い子の文学に必須の「行って戻る」という物語構造を持っています。
で、どちらもOK。
ただ、同じ原理でも、2冊には違いがある。一冊は明るく生活的でもう一冊は深く劇的。
その点で比較しながら論じられます。
『はじめてのおつかい』
当時は筒井頼子も林明子も新人。
内容は、小さい子に納得できる小さい子の生活物語。自然で、しかもリズムがある。
絵は、その物語の自然さを増幅している。「初々しく、楽しく、明るくて自然な筆を持っている」
扉絵からもう物語が始まっているといいます。
たしかに!
そして、画家は、物語の舞台を完全に頭の中にセットしてあって、それが15面のすべてに狂いなく表現されている。
たしかに!みいちゃんの住んでいる町内の地図が描けそうな気がしますね。
画家にどれほど描ける力があるかとうのは、見返しか扉のカットをパっと見ればいいんですって。
『こすずめのぼうけん』
石井桃子、堀内誠一というベテラン同士が、よく考え抜き磨き上げた作品。
内容は、日常レベルをぬけた一度きりの選択で味わう興奮と絶望を含む物語。劇的な孤独な人生の「冒険」を含んでいるといいます。
なるほど、だから、力があるんだ。
画家は、ひたすら平明にシリアスに、ゆっくりと丁寧に、よく考え抜いた方法をとった。それで、物語内部の波長を汲みとった絵になった。
各画面についての解説は省略します。
ただ、ひとつだけ、カラス・鳩・・・の画面のあいだに一場面入れてリズムを作っているということは、いままで意識してませんでした。なるほど!