日別アーカイブ: 2020年4月30日

昔話と児童文学💍

『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論 上』報告

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第4章昔話《昔話ノート》
「児童文学と昔話ーイギリスの場合」
〈昔話の発見者たち〉1971年発表

この項では、昔話がどのようにして児童文学になっていったかについて、簡単に説明がされています。

はじめに、瀬田先生は、昔話は、年齢に関係なく子どもを引き付けるということを書いています。子どもに語るとき、創作は、1年生は喜んでも6年生には簡単すぎるとか、その逆もある。けれども、昔話は、1年生から6年生まで、皆が楽しむ、と。
そうですね、私たちもそれは実感します。

つぎに、その昔話はもともと大人のものだった。大人が「利口になり、複雑になると、かつて興じあった物語を、子どもだましの類としてみすてる」ようになった、代わりに子どもたちが昔話を楽しむようになった、と。
なるほど。でもヤンは大人が「利口になった」というのは皮肉のような気がする。むしろ昔話の中の哲学を理解できなくなった、馬鹿になったんじゃないかな。

瀬田先生は、世界で最初に昔話を発見したのはペローだと書いています。

シャルル・ペロー(1628-1703)フランスの詩人
『ペロー童話集』1697年
昔話をもとに詩を作り、教訓をつけています。岩波文庫に翻訳あり。
サロン風に雅びにみがきたてられ、訓育の衣装をきせられた

その後。

グリム兄弟
ヤーコプ(1785-1863)・ヴィルヘルム(1786-1859)
『子どもと家庭のメルヒェン』(初版1812-7版1857)
これがいわゆるグリム童話集。(グリム童話集の成立と意義に関しては『グリム童話考』小澤俊夫著/講談社刊が詳しくてわかりやすいです)
伝承的な形のままで、訓育的な擬態なしに高い価値を認めた」と瀬田先生は書いておられます。間違いとは言い切れませんが、ちょっと短絡的です。ドイツ口承文芸の研究者である小澤先生の上記の本を読むことをお勧めします。
グリム童話が「世界に学問的なフォークロアの火を点じた」のは、その通りです。
ヨーロッパに近代国家が成立しようとしている時代、国民を精神的にまとめるものとしての伝承が必要だったのです。

グリムに啓発されて、諸国に昔話を収集する運動がまきおこります。

ロシア、ノルウェーなど。
ごめんなさい、瀬田先生の説明がないので、国名だけ挙げておきます。詳しいことは図書館が開館してから報告します。

イギリス
ジェイムズ・O・ハリエル
『童謡と童話』1849年
ここまでは学問的な採録記録。
イギリスで、子どもに手渡すためのリライト(再話)の最初は、アンドルー・ラングです。

アンドルー・ラング(1844-1912)
詩人、小説家、評論家、民俗学者
子どものための世界の昔話を再話して、色分けの童話集を次々に出版します。
第1冊目が『あおいろの童話集』1889年

ジョーゼフ・ジェイコブズ
彼については一昨日の井戸端会議を見てください。
ラングが昔話を広め、ジェイコブズは深めたと、瀬田先生は言います。

ウィリアム・バトラー・イェイツ(1865-1939)
アイルランドの詩人、劇作家
『隊を組んで歩く妖精たち』

ロバート・グレイヴズ(1895-1985)
詩人、小説家、評論家

上記二人を挙げて、かれらは文学運動として昔話を編纂したといいます。その運動の中から、パードリック・コラムが出てきます。

パードリック・コラム(1881-1972)
アイルランドの詩人、劇作家
子どものためにホメロスの叙事詩や北欧神話を再話し、それは、児童文学の古典といわれているそうです。

ところで、こうやって海外で昔話が収集されて子ども向けに編纂され、その成果が、日本にも紹介されます。
『世界童話大系』です。全23巻、1924-28、松村武雄監修、近代社刊
その第7巻が「蘇格蘭(スコットランド)、英蘭(イングランド)篇」、第8巻が「愛蘭(アイルランド)編。
以前に読んだときは、とにかく古いなあという印象でした(笑)
図書館が開いたらもう一度読んでみよう。