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『おだんごぱん』のテキスト🍪

『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論上』報告

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第4章昔話
《昔話ノート》
『おだんごぱん』のテキスト1968年発表

『おだんごぱん』ロシア民話/脇田和絵/瀬田貞二訳/福音館書店1966年刊

訳者ご本人の解説ですよ(^0^)

原典は『ロシア絵話』バレリー・キャリク著/オクスフォード版1922年
検索したらどこにもなかったので、『Picture Tales From The Russian』で検索したら、白百合女子大に1冊あるそうな。
これ以上さかのぼれませんね(笑)

さてさて、みなさんは『おだんごぱん』はご存じですよね。古典中の古典。
で、よく似たお話、ほかにも知ってますよね。
瀬田先生は、そのことについて書かれています。
私達は、類話という言葉で知ってるし、お勉強しています。
その同じことを瀬田先生の言葉で読んでみましょう。
引用
ストーリーがそっくり似ている話が、よく世界中にちらばっているわけは、今日でもよくわかっていません。同じひとつの話の種が、一本のタンポポからたくさんの種子が風にのって東西南北にとぶように、旅人たちの口に運ばれて、世界じゅうにとびちったのだろうという説もあり、昔の人々の考えはたがいによく似通っていたから、世界じゅうのあちこちで同じような物語が同じころに考えつかれたにちがいないという説もあって、どちらが正しいともいえないのです。

わかりやすいですね。
《昔話雑学》「昔話の起源」を参考にすると、もっとわかりやすい(。・∀・)ノ゙

ではその類話の中からどうして瀬田先生はロシアの伝承を選んだのか。
実はそれは書いていないのです。
かわりに3つの類話の説明をしています。

1、イギリス『イギリス昔話集』ジョセフ・ジェイコブズ編
最初:お父さん、お母さん、男の子
出会う:井戸掘り、みぞ掘り、くま、おおかみ
最後:きつね
だまし:耳が聞こえないから、もっと歌ってくれ。
評:簡潔で実際的

2、ロシア
最初:おじいさん、おばあさん
出会う:うさぎ、おおかみ、くま、
最後:きつね
だまし:鼻の先で歌ってくれ、舌の先で歌ってくれ。
評:初めに家庭事情が暗示され、あとは段取りのよい音楽のように流れていく

3、ノルウェー『ノルウェー昔話集』アスビョルンセンとモー編
最初:お父さん、お母さん、七人の子ども
出会う:男、めんどり、おんどり、あひる、がちょう、かも
最後:ぶた
だまし:川を渡してやる
評:かなり凝っている。最後はシャレた結末句。

3は、のちに東京子ども図書館が『おはなしのろうそく18』に松岡享子先生の訳で載せられているのと同じようです。ただ、『お話のリスト』(東京子ども図書館)によると、原著者は「ソーン・トムゼン」となっていて、アスビョルンセンとモーではないので、同じものかどうかは、ヤンには確認できません。

瀬田先生は、「同じ一つの話の種でも、これほどに変化させた人情風俗や風土のみごとなバリエーションに、たまげてしまいます」といっています。
ほんとうにそうですね。だから昔話は面白い。

ちなみに『おだんごぱん』はATU2025「逃げるパンケーキ」。累積譚です。興味のある人は調べてみてください。