デ・ラ・メア『三びきのサル王子』🐵

『瀬田貞二 子どもの本論文集 児童文学論上』の報告つづき

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第2章ファンタジー
《夢みるひとびと》デ・ラ・メア『三びきのサル王子』1975年発表

『三びきのサル王子』は、『ムルガーのはるかな旅』として岩波少年文庫で読めます。脇明子訳。

ウォルター・デ・ラ・メア (1873-1956)
詩人・作家
幻想的で神秘的な詩を書く人です。

『ムルガーのはるかな旅』は、作家として早い時期1910年に発表。4人の我が子に読んで聞かせたそうです。
やはり詩的ということもあって、今日に至るまで賛否両論、好悪両端にわかれるそうです。
ヤンは、今回きちっと読んでみて、深く感動しましたよ。途中でやめられなくなって、晩ご飯が遅くなってしまった(笑)

ムルガーとは、デ・ラ・メアの言葉で猿のことです。
人間の話ではないのでとっつきにくいかもしれませんが、とってもリアリティがあるのです。
まるで人間の物語のようでいて、猿の物語なのです。

三匹の猿は、ティシュナー(これも造語)という理想郷・涅槃を探し求めて艱難辛苦の旅に出ます。ティシュナーは、「ムルガーの生活を超えた、ふしぎな世界、秘密な静かな世界」のことです。

山に住む美しい女神としてのティシュナー

瀬田先生は、ティシュナーの描写について、デ・ラ・メアの才能をこう言います。
引用。
表現しがたいものを表現してみせ、五感のおよびがたいものを形にしてくれる才能・・・親しい日常のものの中にあるふしぎ、平凡なのもにひそむ美しさをもとりだしてくれる能力

『ムルガーのはるかな旅』から感動的な描写を紹介します。
「流れの中の真砂のように、おまえの思いのさらさら動く音がきこえることよ」
「かつて愚かなことをしでかさなかった賢者が、あるだろうか?」

旅の終わりごろの絶体絶命の状況の中での、山びととの友情、水の精の悲しみと愛情。
当時も今も子どもには深すぎて理解しがたいといわれてきたデ・ラ・メア作品ですが、決してそうではないと、瀬田先生は言います。

デ・ラ・メアは、何事にも最良のりっぱなものだけが、子どもにふさわしいと考えていました。

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