ファージョン『リンゴ畑のマーティン・ピピン』🍎

『瀬田貞二 子どもの本論文集 児童文学論上』の報告つづき~

さあて、いよいよファージョンですよ~
ストーリーテリングでも憧れている人たち、多いですね~

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第2章ファンタジー
《夢みるひとびと》ファージョン『リンゴ畑のマーティン・ピピン』1974年発表

エリナ―・ファージョン(1881-1965)
詩人・作家
この時代にしては多作の詩人・作家です。
『リンゴ畑のマーティン・ピピン』(1921年)は、出世作であるとともに代表作。
『ムギと王さま』(年)は、過去の作品の自選集。カーネギー賞とアンデルセン賞をとります。
ヴィクトリア時代と現代を結ぶ最も強力な絆として、両時代の特色をかねそなえています。

『リンゴ畑のマーティン・ピピン』創作のきっかけ
彼女が兄弟の間で自信のない(というか、精神的に自立できない)まま自活しなければならなくなったとき、ひとりの妻子ある男性に密かに恋をします。彼は第一次世界大戦で、出征して戦死します。
『リンゴ畑のマーティン・ピピン』の第3話は、彼と彼の妻への思いが結晶したもので、この第3話を中心にして全体が作られているのです。

この作品の特質

1、テーマは恋愛。
だから、当時、これは児童文学なのかどうか議論があったそうで、ファージョン自身も子どもの本とは考えていなかったようです。これを児童文学ととらえたのは、アン・キャロル・ムア。
今では、恋愛は児童文学のテーマの一つですけれど。
続編の『ヒナギク野のマーティン・ピピン』は子どものために書かれているそうです。

2、枠物語の形をとっている。
枠物語については《昔話雑学》で書いていますよ~。復習しましょ!
ファージョンが、中世にあこがれ、ドイツ文学を愛した、その現れだろうと瀬田先生は言っています。

3、郷土にゆかりのある風土的文学
イギリスのサセックス州のなんと美しい情景、美しい唄が描かれていることでしょう。

構成
初・中・終の三幕のオペレッタ風の展開
プロローグとエピローグがあり、前奏曲と後奏曲があって、6つの物語が、間奏曲をはさんで語られます。
音楽的です。だから、繰り返しが多用されます。

物語
6つの物語は、どれも昔話などの伝承風の作風です。
『ムギと王さま』よりもはるかにロマンティックでみずみずしいと、瀬田先生は言います。

創作法
引用です。
彼女は若い時から着想に苦しむことはなかった。街上所見、耳に挟んだ寸語、読書のヒント、いろいろなところからアイデアが吸い寄せられてくる。なかでも土くさい民俗のかずかず、遊びや遺留、伝説や遺跡、古い風俗などが彼女に多くのアイデアを与え、それからそれへと空想の翼が生えて、ある事件の雰囲気ができる

実在のものが、ファージョンの魔法の杖のひとふりで、実在のまま別の意味を与えられて、きらびやかな夢に変わるのです。
この魔法にかかってしまう人のなんと多いことか。
幼い子には難しいのですが、ファージョン自身は、子どもはわかりにくさを恐れないだろうと信じていて、作品の根本にある子どもらしさを汲みとってほしいのだろうと、瀬田先生は言います。

ファージョンを語るかたたち、もう一度『リンゴ畑のマーティン・ピピン』を読み返せば、彼女の特質を見直せるかもしれないですね。

はい、きょうは、ここまで。

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