ジェイコブズの 『English Fairy Tales』 📚

『瀬田貞二子どもの本評論集児童文学論上』報告

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第4章昔話《昔話ノート》
「ジェイコブズの 『English Fairy Tales』」1967年発表

ジョゼフ・ジェイコブズ (1854-1916)
シドニー生まれ。ニューヨークにて没。
ケンブリッジ大学で学位。
数学、歴史、哲学、人類学、文学を研究。
ユダヤ人問題、民俗学に関する活動。

再話集
1、『English Fairy Tales』1890年
2、『More English Fairy Tales』1894年
この2冊を刊行したのち、ここから60話を選んで一冊にまとめました。それが、
3、『English Fairy Tales』
最初のと同名ですね。これが、英語圏の子どもたちの昔話の底本となりました。
ヤンが持ってるのは1と2。それと、次の4と5、ケルトの昔話ね。
4、『Celtic Fairy Tales』1892年
5、『More Celtic Fairy Tales』1894年

瀬田先生によると、ジェイコブズは、グリム兄弟のように民俗学的な研究のために出版したのではなく、昔話を子どもたちに聞かせ読ませるためでした。それは、3人の我が子のためでもあったといいます。
(ただし、グリムも、子どもと家庭のために再話し出版したんだけどね。そのへんの事情は、この評論文の頃はまだ研究が進んでなかったのかもしれない。ジェイコブズは、グリムにならって、1の巻末に出典等の注もつけています。はじめは民俗学的な意味合いがあったのですね)

ジェイコブズの再話方法
@原話:チャップブック、民俗学誌、伝承の語り歌から探す。
@地方の言葉や古い言語を、わかりやすい言葉に書き改める。
@大人の野卑で粗雑な表現を、格調高く書き直す。
@筋道をすっきりさせる。
@要所要所に、昔ながらの表現や素朴な語り口を残す。
@語り物の音楽的な流れを失わないようにする。

1のジェイコブズによる前書き
全体を通して、年老いた乳母たちが昔語りをするときのような口調で再話することが、私の強い願いでした。・・・この本は黙読するだけでなく、声にだして語るためのものです。
2の前書き
私が再話した昔話は、ヨーロッパじゅうの母親が自分の小さなペギー(ジェイコブズの孫娘)のために語りつづけてきたものです。それはもう長い長い間ね。

さてみなさん、ジェイコブズの再話、何があるかあげてみてくださいo(*^@^*)o

「ちいちゃい、ちいちゃい」「おばあさんとぶた」「ノロウェイの黒牛」「だんなもだんなもおおだんなさま」「ねことねずみ」「ふしぎなお客」「ジャックと豆の木」「さんびきのこぶた」「さんびきのクマ」・・・
多種多様なテーマとスタイル。バラエティ豊かですね。

引用
まず時と処と人物が簡潔に紹介されたかと思うと、ただちに事件が事件を生み、行動が行動をさそって、しだいに緊張をつのらせ、ついに嵐のようなクライマックスにいたり、急転直下和やかな結末におよんで、大団円を結びます。

つまり、昔話の語法にのっとって再話されているのですね。リュティ理論を知らないのに昔話の表現方法は知っていたというのは、グリムと同じですね。

以前に、がらがらどんで「さんびきのこぶた」大会をしたとき、英語の音声を聞きましたね。そのリズムの楽しかったこと(*^▽^*)
英文で書いておきますから、声にだして読んでみてください。

(おおかみ)”Little pig,little pig,let me come in.”
(こぶた)”No,no,by the hair of my chinny chin chin.”
(おおかみ)”Then i’ll huff,and i’ll blow your house in.”

ウォルター・デラメアの引用(ちょっと長いけど読んでみてね)
哀れな昔話や悲しい昔話、そしてぞっとするような昔話にさえも、・・・想像力を育み、さまざまなことを教え、心をじょうぶにし、私たちに「自分自身」の姿を見せてくれます。そういう話は、私たちを悲しませたり、おびえさせたり、時として衝撃を与えることさえありますが、それれも強烈に面白いお話として心に残ります。独特の美しさと真実味と価値をそなえる昔話は、私たちを慰めたり励ましたりもします。-人生そのものの記憶にうったえかけることで。心の中にイメージを作り上げることで。さまざまな出来事や場面、登場人物を語ることで。そして、そこにこめられたメッセージや深い意味を伝える語り口で。その美しさや音楽のような言葉で。

瀬田先生は、「トム・ティット・トット」をグリムの「ルンペルシュティルツヒェン」と比較して、イギリスらしさをこう説明します。
引用
良識あり、簡潔で抑制的、そこにこもるユーモア、自由、またフェアプレイを愛する心、ひなびた愛らしさが、(全部の話に)満ち満ちています。

最後に瀬田先生は、昔話は耳で聞くのが何より一番だと書いています。それが昔話の本質だと。
さて、そろそろ4月も終わります。5月になったら練習を始めましょうか(✿◡‿◡)

4 thoughts on “ジェイコブズの 『English Fairy Tales』 📚

  1. デラメアの引用部分、いつも心に留めておきたいです。昔話の持つ力や語る意味を信じて語れたら良いなと思います。

  2. たぬこさん
    コメントありがとうございます^0^
    ね、いいでしょ!
    デラメアのことば、今回初めて知ったの。
    心、奮い立たせてくれる。

  3. 井戸端会議毎日楽しみにしています。朝一番にサイトを開いて写真が変わってたらすぐ見ます。毎日児童文学を読んで報告して下さるだけでもすごいのに写真がまたきれいでうれしいです。さてジェイコブズの『三びきの子ブタ』の子ブタのセリフがchinyとなっていますがchinnyが正しいようです。迷いましたがお知らせします。私もこの話を語っているのですがこの部分の日本語のセリフもリズムがあって楽しいですね。

  4. コロキチさん
    コメントありがとうございます。
    楽しみにしてくださって、とっても嬉しいですヾ(≧▽≦*)o
    脱字も、教えてくださってありがとうございます(*^▽^*)
    早速訂正させていただきました~
    「さんびきのこぶた」、わたしは石井桃子訳です。
    トントン、とんでもないよ(^^♪
    コロキチさんは?

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